今回は、前回のご相談に関連した以下のようなご質問について検討します。
区分所有法3条には、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」と定められていますが、同条の解釈について、『コンメンタールマンション区分所有法(第3版)』稻本洋之助・鎌野邦樹著(日本評論社、2015年)28頁には、「『附属施設』とは、附属の建物と建物の附属物である(2条4項参照)。」と記載されています。また、同21頁では、「建物の附属物とは、建物に附属し、構造上・効用上その建物と不可分の関係にあるものをいう。その建物に備え付けられた電気・電話・ガス・水道等の配線・配管、エレベーター室の昇降機、テレビ受信施設、冷暖房施設などがこれに当たる。」と記載されています。
そうすると、例えば、建物外に設置された屋根付き平置き式駐車場(以下「車庫」といいます。)は、「附属の建物」とも「建物の附属物」ともいえず、区分所有法3条の「附属施設」に含まれないのではないでしょうか。
■ 回答(私見)
1 共用部分とは
「共用部分」とは、①「専有部分以外の建物の部分」、②「専有部分に属しない建物の附属物」及び③区分所有法「第4条第2項の規定により共用部分とされた附属の建物」をいいます(区分所有法2条4項)【※1】。
2 共用部分としての附属施設
ご質問で引用されている文献の22頁には、「共用部分たる建物の附属物は、建物外に設置された共同の貯水槽、ごみ焼却炉、下水処理施設などのように、建物の内部にあることを必要としない。」と記載されていますので、前項②の共用部分たる「専有部分に属しない建物の附属物」については、建物内部だけではく建物外部に存在することもあり得るということでしょう。
ただし、「共用部分」という以上は、構造上も効用上もその建物と不可分の関係にあるものでなければならないと思います。
3 共用部分以外の附属施設
効用的にはその建物に附属しているといえるものの、構造的にはその建物に附属しているとはいえない施設も存在するでしょう。ご質問の車庫などはその例です。
このような附属施設については、前回説明したように「共用部分以外の附属施設」(区分所有法21条)【※2】に該当するといえるでしょう。
4 区分所有法3条の「附属施設」とは
区分所有法3条においては、「建物並びにその敷地及び附属施設」という用語が使われています。
まず、区分所有法3条に規定する「建物」には、「区分所有権の目的たる建物の部分」(=専有部分)(区分所有法2条3項【※1】)と「専有部分以外の建物の部分」(=共用部分)(区分所有法2条4項【※1】)が含まれます。
そして、区分所有法3条に規定する「附属施設」には、建物内に設置された附属物ないし附属施設のほか、建物外部に設置された附属物ないし附属施設も含まれると解釈します。
前述したように、建物外部にある附属物(附属施設)については、共用部分に該当するもの(上記2)と共用部分に該当しないもの(上記3)があり得ます。
区分所有法3条に規定する「附属施設」を「附属の建物と建物の附属物である」と限定しますと、ここにいう「建物の附属物」とは、共用部分たる附属物ないし附属施設(上記2)のほか共用部分以外の附属施設(上記3)も包含するもの(その意味での広義の附属施設)と私は考えます。
上記のように考えますので、結論として、区分所有法3条でいう「附属施設」については、共用部分以外の附属施設(上記3)も含まれるということになります。
■ 補足
マンション管理の現場において、「共用部分」、「附属施設」又は「建物の附属物」といった用語が使われるとき、その用語を使っている人(管理組合)や使われる場面(文脈)によって意味合いが異なってきますので、注意が必要です。
管理規約等における表現(用語)についても注意が必要です。
例えば、マンション標準管理規約(単棟型)別表第1「対象物件の表示」「附属施設」欄には「・・・建物に附属する施設」という表現があり、別表第2「共用部分の範囲」1項には「・・・専有部分に属さない『建物の部分』」という表現があり、同2項には「・・・専有部分に属さない『建物の附属物』」という表現があり、同3項には「・・・それらの附属物」という表現がありますが、なぜこのような表現になっているのか、また、区分所有法の用語との関係性等についても検討(確認)されておくことをお勧めします。
【※1】区分所有法2条
(定義)
第二条 この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第四条第二項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。
2 この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。
3 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。
4 この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。
5 この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。
6 この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。
【※2】区分所有法21条
(共用部分に関する規定の準用)
第二十一条 建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。
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