今回は、2024年12月に実施した親泊哲様(一般社団法人東京都マンション管理士会理事長)へのインタビューの概要をご紹介します。
■ はじめに
親泊様は、2001年の第1回マンション管理士試験合格後すぐにマンション管理士として開業され、その後現在までに至るまでマンション管理に関する分野で幅広く活躍し続けておられます。
2011年10月にはEMGマンション管理セミナー(シークレットセミナー)において「マンション管理における第三者管理方式」というテーマでご講演いただきました。当時、第三者管理者方式の実践者によるご講演ということもあって、そのセミナーは大好評を博しました。
2024年12月、あらためて親泊様にマンション管理士業についてお聞きしました。
インタビュー動画については別のサイトにてご紹介することとし、ここではインタビューの概要のみを紹介しておきます。
■ マンション管理士親泊哲様へのインタビューの概要
弁護士の平松です。よろしく願いします。まず簡単な自己紹介をしていただいてよろしいでしょうか。
現在61歳です。2001(平成13)年の第1回マンション管理士試験に合格、資格取得直後からマンション管理士として活動し、事務所を開業しました。当初からマンション管理士を職業とするために受験しました。ホームページで情報発信を行いながら、相談に対応し、日常の顧問業務をはじめとして首都圏エリアのマンションで私が助力できるような案件であれば契約をして今日まで至っています。
現在どの位の数の組合と契約されていますか?
顧問業務は12件、第三者管理者と第三者監事はそれぞれ2件ずつ契約しています。他に、管理組合の特定の事業運営を半年から1年程度サポートする契約が常時1、2件あります。
顧問業務とは、どのような業務ですか?
管理組合の運営状況を把握し、理事長や理事、管理会社からの相談に対応することです。理事会に出席して必要に応じて意見を述べたり、助言をしたり、議事録案の確認や補正も行います。管理会社が理事会の運営支援を行わないマンションの場合は議事録案を作成したりもします。なにか短期・中期的な懸案があればそのコンサルティングも行います。こういった業務も追加費用なく顧問契約の中に含め、管理組合のご期待に応えてあげられるのが私の顧問契約の特徴かもしれません。
「第三者管理者」、「第三者監事」とは?
第三者管理者は、区分所有法あるいは規約に定められていること、総会で決議されたことを管理者の権限の範囲内で必要な業務を行います。私が契約している2つのマンションでは、従来の理事会や役員の制度を廃止し、管理者に業務執行を一本化しています。第三者監事は、管理会社が管理者の場合に、マンション標準管理規約に定められた監事の業務を行います。具体的には、年度末監査や管理者への助言、保管口座の印鑑管理などです。書類に押印が必要であれば私が内容をチェックした上で押印もします。なお、いずれも日本マンション管理士会連合会(日管連)が主宰しております管理組合損害補償金給付制度という制度を利用して運用しています。ですから私自身は保管口座の印鑑というものは預からず、この日管連の制度を通じて、日管連の方で全て保管口座の印鑑というものは一元的に管理、運営をしています。
日管連で印鑑を保管しているということですか?
はい。日管連が保管口座の取引に係る印鑑として専用の共通印を作成し、保管しています。私が管理者や監事を務めるマンションの口座の届出印を全てその共通印に変更しています。そのため、銀行の払い戻し請求書などへの押印は日管連の事務所でしか行えません。
第三者管理者方式で契約しているのは2件とのことですが、契約は何年位になりますか?
1件目は15年半、2件目は12年半になります。他にも提案や見積もりを提出した物件は多数ありますが、契約に至ったのはこの2件だけです。管理組合がこれを導入する上での一番のハードルというのは経済的なことになるようです。
第三者管理者方式で契約して解約されたことはないということですね?
はい、ありません。ただし、「リプレイス」のような騒動は3回ほどありました。
騒動とは?
区分所有者から、自分たちが信頼する不動産会社なら半額以下の報酬で管理業務ができると言われ、管理者を代わってほしいと要求されたことがありました。しかし、マンション管理は専門性が高く、安易に地位を譲ることはできません。信頼していただいている区分所有者にも申し訳ないので、どうしても代えたいなら、5分の1総会を開いて承認を得る手続きを踏むようにお願いしました。
親泊様の第三者管理者方式の報酬はどれくらいですか?
1件目は当初12万円でしたが、リプレイス騒動の際に減額し、現在は10万8千円です。2件目は最初から10万円で、追加料金を請求したことはありません。
親泊様の知り合いのマンション管理士で第三者管理者として活躍されている方はいますか?
近年増えてきています。以前はほとんどいませんでしたが、日管連の保険制度などが充実したことで、第三者管理者になる人が増えました。
マンション管理士が、その保険を使うケースは実際にありますか?
あります。毎年、保険更新時に事例集が送られてきて、それで適用事例が確認できます。故意や重過失ではなく、過失によるミスが対象です。
その事例集は誰でも見ることができますか?
管理士会の会員であれば、見ることが出来ます。
親泊様が第三者管理者方式で契約しているマンションの戸数は?
49戸と19戸です。どちらも都心の一等地にあります。
親泊様の顧客獲得の手法は?
近年は紹介がほとんどです。マンション関係者や管理会社関係者からの紹介が多いです。
管理会社との関係性は?
業務が被ることはなく、お互いの役に徹して、マンションの管理運営を良くするという共通のベクトルがあるので、良好な関係を築いています。
管理組合から、管理会社あるいは区分所有者にこういったことを言ってほしいと要望されることはありますか?
以前はありました。しかし、早い時期に、要望は管理組合から直接対象者に伝えるべきであることに気付き、以来それを徹底しています。私はそれをサポートする立場であり理事会の席で補足をするというようなことを徹底しています。
いつ頃からそのようになったのですか?
自主管理のマンションで漏水事故があった際に、トラブルに巻き込まれそうになったことがきっかけです。マンション管理士になって3年目の頃でした。マンション管理士は紛争に介入する立場にありません。それ以降、当事者間のトラブルに直接介入することはやめ、サポート役に徹しています。
親泊様のホームページに「管理会社がなんでもやってくれるからこそマンション管理士の関与が有用」といった記載がありますが、どういう意味ですか?
管理会社に管理を委託すると、管理会社が実務を行い、管理会社が行った実務をチェックすることが理事の仕事になります。委託業務が多いほどチェック項目も増えるため、マンション管理士がチェック業務をサポートすることで、より適切な管理運営が可能になります。
マンション管理士に対するニーズは拡大していくと思いますか?
はい。いくと思います。
顧問契約の期間が一番長いのは?
一番最初の契約先である管理組合とは22年以上契約を継続しています。
今後、親泊様個人として業務を拡大していく予定はありますか?
拡大には協力者が必要です。現在、私の事務所の売上は15年間横ばいです。協力者は2人ほどしかおりません。私は十数件の契約先を抱えていますが、ほとんどの業務を自分で行っています。協力者にも良い環境で仕事をしてもらいたいので、なるべく同行して指導しています。今後拡大していくには、私が育てた者を単独で現場に出していく必要があるでしょう。また、年齢やマンション管理士会の仕事などを考えると、今の業務量がちょうど良いとも感じています。
■ おわりに
インタビューを終え、親泊様の印象を一言で表現すると「安定」でした。「事務所の売上は15年間横ばい」という話がありましたが、マンション管理士としての業務が安定していることはもちろんのこと、人としての安定、その背後にある揺るぎない自信を感じました。
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