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@lawyer.hiramatsu

マンション管理:管理費等請求事件の判決に基づく不動産強制競売申立について

更新日:2023年12月13日

 今回は、以下のようなご質問について検討します。

 当マンション管理組合は、管理費等を支払わない区分所有者(「債務者」といいます。)に対し未納管理費等の支払を求める請求を提起して判決をもらっています。
 債務者は未納管理費等を一切支払いませんので、上記判決に基づいて債務者が所有する部屋(不動産)について強制競売を申し立てる予定です。
 当該部屋の登記をみると抵当権が設定されています。
 当管理組合としては、当該強制執行事件で配当を得られなくても、特定承継人に対し未納管理費等を請求できると考えていますので進める予定です。当管理組合の考えについて問題ありますか。

■ 回答


 いわゆる「無剰余取消し」となる可能性がありますので、もし、その点をご認識されていないとすれば問題があります。


■ 解説


 管理組合のお考えは、当該強制競売手続について、いわゆる「無剰余取消し」(民事執行法63条)【※1】とならずに、「売却実施処分」(民事執行法64条)【※2】が行われ、「買受人」が「代金」を納付し(民事執行法78条)【※3】、所有権が移転する(民事執行法79条)【※4】ことが前提になっていますが、実際には「無剰余取消し」となる可能性もあります。

 無剰余取消し(強制競売手続の取消し)となってしまうと、売却が行われることもありませんので、買受人(特定承継人)が現れることもありません。そうなると、強制競売申立手続に要した費用(コスト)も無駄になってしまうでしょう。これらについてご認識された上で進められた方がよいでしょう。

 なお、無剰余取消しを回避する方法に関しましては、東京地方裁判所民事21部のホームページ(無剰余取消しを回避する方法について)をご参照ください。


 【※1】民事執行法63条

(剰余を生ずる見込みのない場合等の措置)
第六十三条 執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その旨を差押債権者(最初の強制競売の開始決定に係る差押債権者をいう。ただし、第四十七条第六項の規定により手続を続行する旨の裁判があつたときは、その裁判を受けた差押債権者をいう。以下この条において同じ。)に通知しなければならない。
 一 差押債権者の債権に優先する債権(以下この条において「優先債権」という。)がない場合において、不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)の見込額を超えないとき。
 二 優先債権がある場合において、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき。
2 差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から一週間以内に、優先債権がない場合にあつては手続費用の見込額を超える額、優先債権がある場合にあつては手続費用及び優先債権の見込額の合計額以上の額(以下この項において「申出額」という。)を定めて、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める申出及び保証の提供をしないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。ただし、差押債権者が、その期間内に、前項各号のいずれにも該当しないことを証明したとき、又は同項第二号に該当する場合であつて不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超える場合において、不動産の売却について優先債権を有する者(買受可能価額で自己の優先債権の全部の弁済を受けることができる見込みがある者を除く。)の同意を得たことを証明したときは、この限りでない。
 一 差押債権者が不動産の買受人になることができる場合 申出額に達する買受けの申出がないときは、自ら申出額で不動産を買い受ける旨の申出及び申出額に相当する保証の提供
 二 差押債権者が不動産の買受人になることができない場合 買受けの申出の額が申出額に達しないときは、申出額と買受けの申出の額との差額を負担する旨の申出及び申出額と買受可能価額との差額に相当する保証の提供
3 前項第二号の申出及び保証の提供があつた場合において、買受可能価額以上の額の買受けの申出がないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。
4 第二項の保証の提供は、執行裁判所に対し、最高裁判所規則で定める方法により行わなければならない。

 【※2】民事執行法64条

(売却の方法及び公告)
第六十四条 不動産の売却は、裁判所書記官の定める売却の方法により行う。
2 不動産の売却の方法は、入札又は競り売りのほか、最高裁判所規則で定める。
3 裁判所書記官は、入札又は競り売りの方法により売却をするときは、売却の日時及び場所を定め、執行官に売却を実施させなければならない。
4 前項の場合においては、第二十条において準用する民事訴訟法第九十三条第一項の規定にかかわらず、売却決定期日は、裁判所書記官が、売却を実施させる旨の処分と同時に指定する。
5 第三項の場合においては、裁判所書記官は、売却すべき不動産の表示、売却基準価額並びに売却の日時及び場所を公告しなければならない。
6 第一項、第三項又は第四項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、執行裁判所に異議を申し立てることができる。
7 第十条第六項前段及び第九項の規定は、前項の規定による異議の申立てがあつた場合について準用する。

 【※3】民事執行法78条

(代金の納付)
第七十八条 売却許可決定が確定したときは、買受人は、裁判所書記官の定める期限までに代金を執行裁判所に納付しなければならない。
2 買受人が買受けの申出の保証として提供した金銭及び前条第一項の規定により納付した金銭は、代金に充てる。
3 買受人が第六十三条第二項第一号又は第六十八条の二第二項の保証を金銭の納付以外の方法で提供しているときは、執行裁判所は、最高裁判所規則で定めるところによりこれを換価し、その換価代金から換価に要した費用を控除したものを代金に充てる。この場合において、換価に要した費用は、買受人の負担とする。
4 買受人は、売却代金から配当又は弁済を受けるべき債権者であるときは、売却許可決定が確定するまでに執行裁判所に申し出て、配当又は弁済を受けるべき額を差し引いて代金を配当期日又は弁済金の交付の日に納付することができる。ただし、配当期日において、買受人の受けるべき配当の額について異議の申出があつたときは、買受人は、当該配当期日から一週間以内に、異議に係る部分に相当する金銭を納付しなければならない。
5 裁判所書記官は、特に必要があると認めるときは、第一項の期限を変更することができる。
6 第一項又は前項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、執行裁判所に異議を申し立てることができる。
7 第十条第六項前段及び第九項の規定は、前項の規定による異議の申立てがあつた場合について準用する。

 【※4】民事執行法79条

(不動産の取得の時期)
第七十九条 買受人は、代金を納付した時に不動産を取得する。

 

 

 


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